第4回 国際返信切手券(IRC)
はじめに
国際返信切手券(アマチュアではIRCと呼ぶ)をご存じの方は少ないでしょうか。
少数のDXに群がるJAがダイレクトでQSLをもらうには、相手の郵送料金は負担してあげるのが一般的です。JAで発行されたIRCは、受け取った土地で返信料に相当する切手に交換出来るのです。
新旧のIRCと現在注意すべき点をご紹介します。
海外DXとの出会い
開局の3年前、SWL(Short Wave Listener)を始めました。7MHzをワッチし、SWLカードをJARL経由で送りQSLを集めていました。
少し慣れたころからDXもワッチし、コールサインだけを拾って同様にJARLへカードを送ってみました。すると、ある日航空便が届きました。アメリカのK6ZXS、地球の裏側から届いたエアメールに驚いたものでした。
しばらくすると、珍しい国から出ている局からQSLをもらうにはJARLへ送るだけではダメということを知りました。QSLの転送業務を行うアマチュア無線連盟は全世界にあるわけではなく、本人またはQSL発行を代理してくれるマネージャーへ直接郵送しないと届かない、ということでした。
しかもSWLだけでなくQSOしたハムも、相手のQSLを返送してもらう『返送料』を同封せねばならない、とのこと。JAから見れば相手は一人でも、珍局側では多数ですから郵便料金も多額です。もっともな話ですが、この返信料として同封するのが『国際返信切手券』です。
国際返信切手券(IRC)とは
国際返信切手券(International Reply Coupon)は、郵便局で購入します。これを郵便に同封して海外へ送り、受け取った人が地元の郵便局へ持ち込むと、その国の郵便切手に交換してくれます。アマチュア無線家は一般的にIRCという略称で呼んでいますが、郵便局の窓口では通じない用語ですので、ご注意下さい。
便利なシステムですが、購入金額の割に交換してもらえる切手の金額が少ない(レートが低い)のが欠点です。現在のJAでは、1枚150円で購入でき、海外からのIRC1枚は130円の切手に交換されます。
約40年前の話に戻りますが、まだ1ドル=360円の時代でした。マカオ(XX9)へのDXペディションがあり、QSLは香港の私書箱へ送れという情報がありました。
2002年以前のIRCの表面(上)と裏面(下) 紙が薄すぎて、裏面が透けて見える(画像修正後)
![以前のIRC(表)](no4/irc1.jpg) ![以前のIRC(裏)](no4/irc2.jpg)
SWLカードと自分の住所を記した返信用封筒、さらにIRCを封筒に入れます。返信用封筒は、IRCとともに相手の負担を少なくするためのもので、SAE(Self Addressed Envelope)と呼ばれます。日本国内では返信用切手を貼るのでSASE(Self Addressed and Stamped Envelope)となります。
当時は航空便封書の最小重量は10gですが、これを越えたので切手を200円以上貼ったと思います。しかも、IRCは当時170円、1枚が船便1通分の返送料に相当しましたから、航空便1通なら3枚必要でした!1通送るだけで700円を越えます。大人のDX’erならいざ知らず、親には申し訳なくなりました。
現在はIRC1枚が150円(一時期、140円だったこともある)、1枚で航空便1通が返送可能な場合が出来ました。JAからの送料も最小重量20gまでとなり、アジアの近隣なら90円、南米・アフリカでも130円です。円高の影響でしょう、日本も豊かになりましたHi。
さて、IRCの現物をご紹介
IRCのデザインは長年変化がありませんでした。古いものでも立派に通用し、私も20年以上前に購入したものを送って返信をもらったことがありました。
表面にフランス語、裏面にドイツ語・英語・アラビア語・スペイン語・ロシア語で注意書きがあり、万国郵政連合に加入する国では海外宛航空 ![2006年までのIRC](no4/irc3.jpg) 郵便1通以上の返信に必要な費用に交換出来る、という趣旨の文章があります。フランス語が表面というのは、IRCが生まれた国がフランスだからです。
さて、2003年に新しいデザインのIRCが発売されました。
(右写真)縦横いずれも4割程度大きなサイズとなり、裏面にバーコードが追加されました。半年前に気づいたのですが、有効期限が2006年12月31日という記述がありました。3年毎に新しいデザインに切り替えられるそうです。
このIRCの有効期限半年前である2006年7月1日、新デザインのものが発売されました。(下写真)今度は2009年12月31日まで有効で、偽造防止のためでしょうか、ホログラムが追加されています。スタンプ横にある“Japon”の下です。 ![2006年7月からのIRC](no4/irc4.jpg)
旧IRCは2006年12月31日までなら交換可能でしたが、現在はただの紙です。記念に1枚ずつ残しておきました。
IRCは万能ではない・・ドル札がある
便利なIRCですが、実は航空便1通の返信には使えない国が多数あります。前述の『航空郵便』では各国の封書の重量が加味されていないようです。(船便ならば、1枚でOK)
例えば、現在スイスやオランダからQSLを返送してもらうには2枚必要です。SAEを沢山ばらまくと、かなりの出費になります。
フランスはIRC発祥の地だけあり、IRC1枚で十分です。またJAのようにIRC1枚で切手XX円分に交換という国が一般的ですが、ドイツの郵便局はIRC1枚で航空便1通分、と金額換算でないようです。送料が全世界一定でないのですから、ドイツ人らしい合理的な考えでしょう。
もっと安くする方法はないか・・・・実は、1ドル札を同封する方法があります。2007年春現在、1ドル=118円前後ですから割安ですし、IRC1枚はダメでも1ドルならOK、というところもあります。一方で、IRC1枚はOKだが2ドル必要という国もあります。為替レートの兼ね合いなのでしょう。
ドル札は俗称で「グリーンスタンプ」と呼びます。黒と緑の印刷ですから、なるほど納得です。
SAEに1ドル札を同封することはDX’erには常識、私も市内の某銀行で換金してもらいました。窓口で「1ドル札100枚をお願いします」と言うと、必ず「ご旅行ですか?」と尋ねられますHi。
便利なドルですが、先進国はまだしも発展途上国では要注意です。郵便配達人が抜き取ってしまうのは良くある話、我々の感覚で言えば、5千円や1万円と同じ価値の国もあります。このような国は、リスクの少ないIRCが安全です。
|