温故知新

第1回 QSL転送ステッカーの話

はじめに

 近所のOMから、30-40年前のJARL NEWSをお借りしました。JA0コール中頃までの局はご存知と思いますが、雑誌ではなくタブロイド版の新聞です。
 アマチュア無線が普及し、大人だけでなく中高校生の趣味として広まった時代です。私自身がこの世界に足を踏み入れた(踏み外した?Hi)懐かしきころ、珍しい話題(トリビアなネタ)を多数発見しました。順番に紹介しますので、当時を知る人も知らない人にも楽しんでいただければ幸いです。
 尚、内容に誤りがあればお知らせ下さい。(私が知らない・記憶にない時代もありますHi) 表現は配慮しておりますが、稚拙な点・行き届かない点はご容赦下さい。

JARLのQSL転送は会員限定?

 実は以前はJARL会員以外でも利用可能でした。正確に書けば、会員から非会員宛へ送ることは可能で、逆に非会員から会員へは転送不可でした。但し、以下の制約がありました。
  1) 非会員への転送は1年に1回のみ
  2) 会員は1枚あたり一定の転送料を支払うこと
 私も開局2年目くらいまでは非会員で、QSLはもっぱらダイレクトで交換(当時はハガキの郵送料が7円)していました。・・・・会費に見合う分ほどQSLの発行枚数がなかったのですHi。
 JARLからの転送は、忘れたころに届いたものでした。

さて、「転送料」は?

国内ステッカー QSL1枚あたり1円(1970年ころ)でした。これを支払う方法が左の「ステッカー」でした。大きさはほぼ通常切手サイズ、無線機店で販売しており、1シート100枚でした。裏にはノリがついており、水でQSLに貼り付けました。ノリの質は悪く、戦前戦後の切手のようでしたHi。
 尚、ステッカーの無い非会員宛QSLは翌月発行者へ返送されます。
 届いたQSL、保管箱から結構出てきました。5〜8月のEスポシーズンにQSOした4〜6、8エリアのカードに結構貼ってあります。
ステッカーの貼られたQSL 50MHz AM、1Wのハンディトランシーバが一般的で、お金がある人が10W機を使っていました。「ハンディ」と言っても、単二電池9本を内蔵するのでA4サイズですし、「1W QRPです」とは誰も言いませんでした。

ところが1971年に・・・・

JARL NEWS JARLが非会員宛のQSL転送サービスを打ち切ることを決定しました。1970年のデータによれば、非会員宛の発送は約5万5千局で約28万枚に及び、2年前に比べ倍増だったそうです。
 さらに翌年に郵便料金が値上げされることも決定を加速させたようです。現在よりは財政に余裕があったものと推察されるJARLでも、コストアップには対処しきれませんでした。1972年7月1日より正式実施されました。
 打ち切り後も非会員宛のQSLは印をつけて発行者へ返送してくれました。しかし、これも費用がかかるため、しばらくして非会員宛QSLは返送せずに廃棄されるようになった(時期はこれから資料を探します)のです。
 当時の記事がありましたので、右をご覧下さい。

もう一つのステッカー

海外ステッカー 以上の件は国内QSLの話、DX宛のQSLにもステッカーがありました。色はこげ茶色、基本デザインは一緒ですが下に「BOX 377 TOKYO JAPAN」と書かれています。
 海外からのQSLや郵便物は東京郵便局私書箱377号が窓口になっていました。QSLの宛先にJARL(P.O.BOX 377 TOKYO JAPAN)と記載していた方も結構いました。
 これが1枚2円ですが、海外宛QSLを送るのに1枚ずつ貼らねばなりませんでした。いつからでしょうか、これは廃止されて無料になりました。
 現在も同じですが、DX宛は相手の国の無線連盟(ビューロ)へまとめて発送します。ビューロが無い国へは送れません。また、ビューロが上手く機能していれば相手へQSLが届きますが、ビューロのQSL転送サービスが実質的にしていない(よく聞く話!)とか、紛失ミスが多発するところでは行方不明になっていた・・・という話も多々あります。
 JAのビューロでも送ったはずのQSLが行方不明になった・・・という転送ミスはありますが、確率はわずかで、世界的にも優秀でしょう。

今後QSL転送はどうなるの?

 QSL転送はJARLの目玉事業ですが、ここ数年輸送コスト削減が大きな課題になっているようです。郵便のみに頼っていた手段が輸送業者に切り替わり、改善されたものの更なる対応を求められています。このステッカー制度のように発行者が費用負担するという考え方も再考すべきかもしれません。
 もちろん、運用上の問題はたくさんあります。ステッカーのコストがかかりますし、多数発行する人にとっては貼る手間も大変です。貼るとQSLが厚くなり、保管に困ることもあります。
(切手の貼ってあるハガキを50枚くらい集め、切手の位置をそろえてみてください。切手の箇所だけ厚くなります。)
 送る重量に応じて料金を追徴する方法は、料金の支払い方法が難しいですね。
  1. 会費の一部をQSL転送料としてストックし、受け取った分だけ差額を引く・・・・・・複数の人が送った場合、どうなるの?
  2. JARLで処理ミスが生じたら賠償は?
  3. カード決済・・・・・・カードは誰もが作れませんHi
 名案があれば、提案しましょう。

最後にオマケでe-QSLの話

 e-QSLならいいじゃない?という意見もありますが、個人的には反対です。「証明書」としては成立しますが、いかにも事務的・無味乾燥でつまりません。従来のように相手が1枚ずつ発行してくれれば心が伝わるように思えるのです。たとえパソコン管理・プリンタ印刷だったとしても、です。
 私もPCで印刷しますが、1枚ずつ自筆でサインします。時々手書きであれこれ追記しますが、これも事務的な処理のみにならないように、という配慮です。
 デザインをあれこれ考えるのも、楽しいものです。PCが普及した現在、オリジナルデザインのQSLを作ってみませんか。
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