☆☆ 日本酒の雑学
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プロローグ
 日本酒で「XXX」という銘柄と聞いただけで全てが美味い!とお思いになっている方がいます。女性にも多くいらっしゃるのですが「ブランド志向」の一つです。
 ちょっと待ってください。いろいろな専門家のページでも述べられている話ですが、日本酒のウンチクを書いてみましょう。
日本酒の種類
 我が実家は酒の小売業、町のありふれた酒店です。子供の頃から酒ビンは見慣れてきました。 日本酒といえば、一般的には一升瓶ですね。あとは四合・二合・一合瓶あたりが一般的ですが、アルミ缶も多くなってきました。そうそう、「ワンカップ」なんてのもありますね。
 さて、ここでは酒ビン・缶のような外見ではなく、製造方法について書きます。

 一升で2000円程度の酒もあれば、綺麗な瓶に入って四合程度で1万円近い酒もあります。それは何故?製造方法に違いがあるからです。
 酒を製造するには米が必要です。モミを取っただけの玄米では「胚芽」(米ぬかです)が残っています。また、胚芽を取っても米粒の外周部は脂肪分が多いため酒の味を落としてしまいます。この不具合を対策するため、米は精米した後にさらに精米機で周辺を削ります。米の中心部だけを使うのです。元の米に対し何%まで米を削るかを表す数値を「精米歩合」と呼びます。

 さて、「吟醸酒」とか「純米酒」という名前をお聞きになったことがあるでしょう。この意味を以下に書きます。

【大吟醸酒】 精米歩合が50%以下の白米を原料とし、低温で発酵(故意に酒の温度を上げて発酵を促進させない方法、冬に酒作りをするのは周囲温度が低いのでこの条件を満足できるから)させることで製造した清酒。
 酒造元の杜氏が品評会に出展するために手間ひまを掛けて手作りで仕上げた酒は、大抵この類に入る。勿論、機械化で作られたものもある。

【吟醸酒】 精米歩合が60%以下である以外、製法は大吟醸酒と同じ。以下の酒は機械化されて製造されたものが目立つ。

【純米酒】 精米歩合70%以下の酒。白米と米麹のみで製造。(「のみ」と書いたのは、以下の製法と区別するため)

【本醸造酒】 精米歩合70%は純米酒と同じ。但し、ここに「醸造用アルコール」というものが含まれてくる。ここがクセモノ。
 醸造用アルコールとは、穀物で作ったアルコール(サトウキビのしぼりカスを醗酵させ作ったアルコールが多いとか)であり、原酒に添加することが出来るもの。原酒自体の味を変えて飲みやすくする目的もあるとか。
 本醸造は、白米重量の10%までこのアルコールを添加(アルコール度95%として)することが許されている。

【普通酒】 本醸造酒で決められた以上のアルコールを添加した酒。さらに味を調整するために糖類を加えることもある。

 以上の分類に大別出来ますが、製法によって出来上がる酒の量が違ってきます。
 玄米1kgで出来る酒の量を比較すると、以下のようになります。
   大吟醸酒  約5合
   吟醸酒   約8合
   純米酒   約9合
   本醸造酒  約1升2合
   普通酒   約2升
 もちろん、上記値は蔵元・製造基準によって異なるはずですので、あくまでも目安です。
 言いたいのは、大吟醸と普通酒では全く中身が異なるということです。同じ米の量であっても、普通酒は大吟醸酒の4倍製造出来るのです。機械化されたとしても、味も値段も違って当然です。
 酒の評論家が「これは絶品!」と評するのは、大半が大吟醸酒であり、かつ前記のように杜氏が丹精こめて手作りで仕上げた品評会へ出展するような酒です。このような厳選された酒が受けた評価を普通酒に当てはめることは無理でしょう。
 絶賛を受けた蔵元の普通酒は、他の普通酒に比べ優れたものである確率は高いと思います。しかし、無名の大吟醸酒の多くにはかなわないのではないでしょうか。

(続く)     参考文献 「夏子の酒」