2010.7.31作成
2010.10.5追記
ワープ WT-200
☆周波数・モード | 非公開 |
☆定格出力 | 非公開 |
☆最大周波数偏移 | 非公開 |
☆送信周波数構成 | 非公開 |
☆受信周波数構成 | 非公開 |
☆マイクインピーダンス | 非公開 |
☆受信方式 | 非公開 |
☆受信感度 | 非公開 |
☆通過帯域幅 | 非公開 |
☆電源 | 非公開 |
☆消費電力 | 非公開 |
☆寸法・重量 | 非公開 |
☆発売年・定価 | 非公開 |
![](wt200/wt200-1.jpg)
リグの説明
![](wt200/wt200a-front.jpg)
ワープのWT-200です。多くの方が聞いたことのないメーカーと思いますが、昨年オークションで入手しました。
取扱説明書はありますが、回路図がありません。当初取説が行方不明だったので、技術情報なしで取り組みを開始しました。
本体の他にモービルブラケットがあり、電源コネクタ付きケーブルとM-BNC変換コネクタが付いています。本体背面の4ピン電源コネクタとBNCのアンテナコネクタが挿入可能です。
![](wt200/wt200-9.jpg)
周波数は100KHzと10KHzのケタをそれぞれモーメンタリのトグルスイッチで可変します。上向きに押すと100KHz・10KHz上昇し、下向きに押すと下降します。
このスイッチの中間にメインチャンネルのプッシュスイッチがあり、145.00MHzに移動します。
周波数はA・Bの2VFOが設定可能で、Aで受信・Bで送信という操作も可能です。さらに5個の固定チャンネルをハードでプリセットします。
マイクコネクタは現在入手困難な小型6ピンです。
![](wt200/wt200-2.jpg) |
![](wt200/wt200-3.jpg) |
上面(PLL・ロジック回路) |
下面(送受信回路) |
![](wt200/wt200-5.jpg)
小型なリグですが、狭いスペースに無理やり詰め込んだ感があり、メンテに苦労しました。
基板はアルミ板を挟んで上部にPLLと周波数制御ロジック基板、下部に送受信基板があります。上部基板2枚は1列のピンコネクタ4個ではさみこむ「親ガメ子ガメ」状態です。
さらに上部・下部の基板はアルミ板の中央に穴があり、ピンコネクタで接続します。ケーブルを使わない組み立てですが、電源コネクタやメータ等のパーツが近傍にあり、基板の取り外し・組み立てはアクロバットです。
この構造のお陰で、メンテナンスには泣かされましたHi。
不具合あれこれ
![](wt200/wt200-4.jpg)
電源スイッチ(スライドスイッチ)が上部カバーの左上にありました。電源スイッチ付きボリュームが故障したらしく、前オーナーがスイッチなしのタイプに交換し、電源スイッチを追加したようです。
ボリュームはシャフト径3mmの特殊タイプで、入手困難です。スイッチはスペースが足りずネジ1本でしか止めてありません。スイッチは諦めて外部電源のON-OFFにし、スイッチの取り付け穴はパテで埋めました。
また、ボリュームがイモハンダで音声出力が途切れます。 (右写真) 再ハンダしました。
メインチャンネルのプッシュスイッチも変更したらしく、スイッチ部が表面パネルの奥にもぐり込んでいます。これも特殊部品、交換は諦め現状のままにしました。
さて、動作確認で困ったことに気づきました。周波数が正しく下がっていかないのです。
100KHz台はUP/DOWNとも正常でした。ところが、10KHz台はUPは正常なのにDOWNは不規則に変化します。
例えば145.80MHzからスタートすると、→145.79→145.60→145.59→145.40→145.39→145.20・・・と10KHz下がった次に190KHzも下がり、以下繰り返します。いろいろなパターンを試しました。
145.79MHzからスタート →145.60→145.59→145.40→145.39→145.20→145.19・・・
145.78MHzからスタート →145.60→145.59→145.40→145.39→145.20→145.19・・・
以下、同一パターンにつき省略
145.70MHzからスタート →145.60→145.59→145.40→145.39→145.20→145.19・・・
145.69MHzからスタート →145.50→145.49→145.30→145.29→145.10→145.09・・・
145.68MHzからスタート →145.50→145.49→145.30→145.29→145.10→145.09・・・
マイクのUP/DOWNスイッチでも同じ症状で、受信周波数は表示と一致しています。
周波数制御ロジックのトラブルと判断しました。早速追跡を・・・、ところが基板が2段重ねになっており、下の基板はオシロで追跡が困難です。しばらくの間、作業をストップし頭を冷やしました。
![](wt200/wt200-6.jpg)
直接チェック出来るロジックの上の基板で考えてみました。CMOSロジックが並んでいますが、BCDカウンタの4510とLEDドライバの4511が3個ずつ並んでいます。4510の出力でPLLの分周比を決めているようなので、10KHz台と思われる4510の出力Q1-Q4を確認すると、DOWN時の出力が規則正しく下がりません。早速交換したところ、不具合はピタリと止まりました。
4510はUP/DOWN端子の論理によってクロックをアップ/ダウンカウントするICですが、ダウンカウントのみ異常だったようです。
発振部
一段落したので周波数拡大の改造を元に戻します。基板上の切断したダイオード4か所を修復したら、解決しました。
次にメモリ5チャンネルのうち3チャンネルが異常と判明しました。基板上に並んだダイオードマトリックスの値を読むと、正常な2か所はBCD設定されていましたが、3チャンネルは設定と合っていません。
原因はVFOA・Bとメモリを切り替えるロータリースイッチの不良でした。これも代替え品は入手困難、現状で使用します。
本機はメモリ1-5であってもUP/DOWNスイッチで周波数を可変出来ます。ダイオードマトリックスの値をカウンタに読み込ませた後にUP/DOWNカウンタのクロックを入力しているようです。使用上は問題ありません。
次は送受信のためのPLL部の周波数チェックです。受信周波数は約1KHz、送信周波数は約2KHzずれていました。PLL回路のコイルを調整し、合わせこみました。
受信部
![](wt200/wt200-8.jpg)
受信は出来るのですが、感度が良くありません。コイルやトリマを調整しても1uV入力でS/N15dB程度です。高周波増幅のトリマ5個中3個はほぼ最小容量にセットされているようです。
高周波増幅はシールドケースに入っており、分解すると入力2段・出力3段の同調回路があります。コイルをいじってみましたが、効果が乏しい上、シールドケースをハンダ付けで固定しないと特性が変化し、微調整が厄介です。
良く見ると、各同調回路にバリキャップがあり、たどっていくとPLL回路から周波数の変化に従って増減する電圧が印加されていることが分かりました。以前IC-28でも経験しましたが、周波数変化に応じた同調を取っているようです。しかしPLL基板からの電圧が0.3-0.8Vと低いので、同調がずれていると推定しました。
VCOのトリマを少し回したら、上記電圧が2-3Vまで上昇しました。少しメータが振れるようになりましたが、まだ不十分です。回路図を入手するか(難しいでしょうが)、類似したトラブルに出会ってヒントが得られるまで現状のまま保留します。
送信部
![](wt200/wt200-10.jpg)
送信パワーは当初から9W出ており、トリマ調整後12Wになりました。
スプリアス特性も良好で、2次高調波は-60dBを楽々クリアしています。
F=145.00MHz、 X:100MHz/div、 Y:10dB/div
ところが、変調がかかっていないことに気づきました。回路のトラブルか?と思ったらマイクがダメで、ダイナミックマイクのエレメントから出力が出ていません。
手持ちのジャンクマイクからエレメントを流用しようと考えましたが、小型マイクなので入るものがありません。
ここは一工夫・・・というわけで、手持ちのコンデンサマイクを入れて対処しました。
その他
コンパクトな意欲作ですが、メンテナンスを考慮した設計ではなく、サービスマン泣かせのリグです。当時の技術派のハムショップでも、修理はメーカー送りでしょう。これでは(個人的な思い込みがありますがHi)ユーザーはともかく、販売店は積極的には売れないと思います。
知名度の低さもありますが、数年でこの業界から撤退し、メーカーも現存しないようです。
小型なパーツを多数採用しており、新品は入手困難ですし、他のジャンクリグからも同タイプのパーツが見つかりません。『現状のまま』という中途半端な処置にせざるを得ない点が多々あったのは、残念でした。
基板間をケーブル接続せずにコネクタではさみ込む構造なので、部品交換の度に基板を取り外さねばなりません。この時、ハンダを外したり電源コネクタ・メータにぶつからないように組み立てるのに苦労しました。
当時は許容出来た生産技術かもしれませんが、今はメンテナンス時間が修理コストを決める時代です。同じ構造のリグが現在も存在したとしても、おすすめできません。
メーカーの保守期間が終了しても、手を加えて使い続けたい・・・・アマチュア無線やオーディオでは、そんな暇人がいても良いと思っています。