![](hs144/hs144a-9.jpg)
トランシーバとしては珍品に入るマルドル(北辰産業)のリグです。マルドルはアンテナのメーカーとして有名でしたが、1970年代にモービル機を生産していました。
昨年(2008年)春に倒産しましたが、在庫のアンテナやパーツはまだ入手可能なようです。
取説と回路図がありません。もうメーカーが無い以上、入手も難しそうです。
ワイドFMからナローFMへ切り替わる時期です。周波数切替ダイヤル・ボリューム・スケルチがあるだけで、非常にシンプルです。
![](hs144/hs144-3a.jpg)
下側のカバーを外すと、基板1枚が見えます。水晶は1チャンネル1個ですが、途中の周波数から判断して44MHz台の水晶発振を3逓倍し、送信は10.7MHzをミックスして145MHzを、受信は10.245MHzをミックスして第一局発にしているようです。
コンパクトなリグですが、マイクコネクタが下にあり、常置場所で使用することが難しいのが欠点です。モービルなら、ブラケットを使って何の問題もないのですが・・・・。
![](hs144/hs144-2a.jpg)
水晶が13チャンネル実装されていました。前記の周波数構成から判断し、他社の水晶は使えそうもありません。
周波数カウンタで発振出力の134MHzを測定しましたが、全て誤差1KHz以内に収まっていました。前オーナーが調整していたと思われます。
![](hs144/hs144-4a.jpg)
受信も問題なく出来ましたが、Sメータが振れないトラブルがありました。
80dBuの信号を入力しても、S3で飽和してしまいます。何か変・・・・とメータ出力信号回りのコンデンサを交換しても変化ありません。送信は問題なくメータが動くので、メータの故障でもありません。
原因は出力回路のダイオードとRFCのショート(リードの接触)でした。送信回路のダイオードの影響でメータへ流れる電流が制限されたためと思われます。(右写真)
距離を離し、ダイオードのリードに絶縁チューブをかぶせて対策しました。
455KHzのフィルタが2段入っていますが、ワイドFM用のCFU455Cでした。手持ちがあったので、CFU455Eに交換しました。
![](hs144/meter1a.gif) |
![](hs144/meter2a.gif) |
バンド内特性 |
メータ特性(F=145.20MHz) |
調整後のデータのみ示します。20dBu入力でS9になるようにメータを調整しました。
高周波増幅はトランジスタ2SC1393でした。低NFのデバイス(2.0dB@200MHz)ですが、この時代に多用されたMOS FETではないことは意外でした。
受信感度は1uV入力でS/N35dBと優秀ですが、トランジスタなので混変調・相互変調が心配です。
資料によれば、電力増幅はトランジスタの2SC1729です(実装時では品番が読めません)。パワーモジュールが使われ始める2年くらい前の製品ですが、パッケージの小さなトランジスタを採用して小型化を図っています。
![](hs144/hs144-5.jpg)
送信パワーは10Wくらい出ています。トリマを調整し、約11.5Wまで増加しました。実装周波数の範囲内でフラットです。
ところがスプリアス特性は当初2倍高調波が-55dBでした。トリマを再調整しても、改善されません。
ここで出力回路のコイルのピッチを調整すると、-60dBまで改善することが出来ました。右写真は最終結果です。
F=145.00MHz、 X:100MHz/div、 Y:10dB/div
デビエーションはナローに調整済みでした。
![](hs144/hs144-8.jpg)
性能はまずまずですが、気になる点が2つありました。
まず、周波数表示の文字が非常に小さいことです。表示板(直径4cm弱の円板)に24チャンネルの周波数を2桁で配置しているので、文字が小さくなるのは否めませんが、モービル運用時に読み取るには厳しいでしょう。
![](hs144/hs144-6.jpg)
あとは背面パネルのデザインです。(私見ですが)失礼ながら、アマチュアがレタリングシートで自作したような仕上がりです。滅多に見ることはないので(特に車載後は)気にならないかも知れませんが・・・・。
EXT.VFO(外部VFO)の接続端子がありますが、発売されなかったのではないでしょうか。