![](tr8000/tr8000a-front.jpg)
トリオ(現ケンウッド)初の430MHzFMトランシーバです。1970年ころから数社が製造販売を始めたようですが、1971年に井上(現アイコム)が発売したのを追うようにトリオも参入したようです。デザインは144MHz帯のTR-7200シリーズに合わせてあります。
回路図がありませんが、動作さえすれば部品の配置でおおよそ調整可能です。
オークションで入手したのですが、実装周波数は4チャンネルだけでした。しかも、当時使われていた431.88、432.00、432.12、432.24MHzです。これだけでは使い物になるか評価できませんが、幸いにもTR-8300と周波数構成が同じようで水晶に互換性があります。TR-8300の水晶を差し込んで調整を試みます。
![](tr8000/tr8000-3.jpg) |
![](tr8000/tr8000-2.jpg) |
上面図 |
下面図 |
![](tr8000/tr8000-5.jpg)
送受信部を軽くチェックすると、出力電力が不安定です。受信も同様に感じましたので、送受信の切り替えリレーを分解、接点洗浄剤でクリーニングしました。(右写真)
写真は外部シールドケースを外した状態です。当時はこれで十分だったのかもしれませんが、UHFの信号を扱うには少し不安があります。
![](tr8000/tr8000-6.jpg)
次に気づいたのがメータのゼロ点がズレていることでした。電源を切っても、メータの針が"0"ではなく、1から1.5を示します。 (左写真)
分解してゼロ点を調整しましたが針の止まる位置が安定しません。ジャンクのTR-7100からメータを取り、交換しました。
![](tr8000/tr8000-9.jpg)
受信部は高周波増幅後に10.7MHzに変換・中間周波増幅されています。初段の大型の10.7MHzクリスタルフィルタが目立ちます。後段は小型のセラミックフィルタで済ませてあり、前段で近接信号ををカットし混信対策しています。
ナロー化対策に必要なフィルタの同等品は当然ありません。
セラミックフィルタのところに水晶フィルタが入るか?ですが、とりあえず現状通りとします。
初期特性を取ると、当時の周波数に合わせたように432MHz台の感度が良いようです。バンドパスフィルタを調整し、433-434MHz台の特性を改善しました。メータの振れは6以上で飽和傾向です。
感度は1uV入力でS/N29dBでした。まあまあでしょう。
![](tr8000/tr8000-7.jpg)
送信部は水晶で24MHzを発振させ、18逓倍しているようです。最初に送信すると、431.8から434.0MHzの範囲で約9W程度の出力が得られました。ドライバから最終までのトリマを回し、出力のフィルタを調整すると10W出るようになりました。ところが、しばらく放置すると出力が落ちてきます。
原因はドライブ段のセラミックトリマが2箇所壊れかかっていたからでした。わずかな接触の有無でパワーが数W変化しますので、交換しました。右写真は交換後ですが、丸の位置とシールドケース内にもう1箇所あります。
エアトリマは丈夫ですが、セラミックトリマは固くなったのを回そうと力をいれるとパキッ!と割れるので、注意したい部品です。これで10Wが安定して出力出来ました。
![](tr8000/tr8000spe.gif)
スプリアス特性は優秀で、2次高調波が-65dBでした。
F=433.00MHz、 X:200MHz/div、 Y:10dB/div
水晶の逓倍ですから、もう少し悪い値を想定していましたが、出力のフィルタが有効に効いていると思われます。
変調部の調整ですが、元々ワイドFM機ですから、ナロー化せねばなりません。他のトランシーバで近接チャンネルをモニターしながらマイクゲインのボリュームを回し、最適な点を求めました。
2007.4.14変更:
以前、低周波回路にスプラッタフィルタが必要と記していましたが、入っていました。VR1でマイクゲイン、VR2でデビエーションを調整します。
![](tr8000/tr8000-8.jpg)
珍妙なのが、上面にあるアルミの丸いパーツです。送信部のヒートシンク上にあり、上のケースとネジで止めます。
放熱と上ケース(アルミ)の強度アップを図ったものと推測しますが、上ケースにあるネジ2本(一番上の写真を見てください。黒い上ケースに2つ、黄色く見えるのが止めネジです。)は格好が良くありません。
私はオリジナルからこの構造だったと考えているのですが、後からユーザが変更したのでしょうか。お分かりの方がいらっしゃったら、レポートをお願いします。
2007.3.29追記:
大阪の方からメールをいただきました。オリジナルの仕様とのことでした。ありがとうございました。